アンビグラムの数学的定義(β版)を読み解いてみる

tsukene氏による定義

グリフ(X,x)とは、平面上の図形Xと、それを認識した文字/単語/文xの対とします。 平面の等長変換すべてからなる群をE、平行移動すべてからなる部分群をTとします。

Tの部分群Gが、平面上の図形Xを「重なりなくタイルする」とは、Gの任意の元g(≠単位元)について、g(X)Xに共通部分がないこと、とします。このときg(X) (g \in G)すべての合併をG(X)と書きます。

平面n個の非交和をR_nとおき、平面上の図形n個の列(X_1, \ldots , X_n)を、R_nの部分集合とみなします。

R_nの、n個の平面を入れ替える写像(n!個ある)と、各平面の等長変換すべてから生成される群をE_nとおきます(n個のEの輪積と呼ばれるものになります)。

グリフn個の列X=\{(X_1,x_1) , \ldots , (X_n,x_n)\} について、Tの部分群G_iが各X_iを重なりなくタイルするとします。

このときX(G_1 , \ldots , G_n)アンビグラムであるとは、R_nの部分集合(G_1(X_1), \ldots , G_n(X_n))を不変にするE_nの元からなる群が、G_1 \times \ldots \times G_n (直積)より真に大きくなること。

 

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n=2で考える。

平面2個の非交和をR_2とおき、平面上の図形2個の列(X_1, X_2)を、R_2の部分集合とみなします。

非交和を考えるということで、ちょっと単純化します。部分平面、離散的にして、敷詰を考えないこととします。ここでは2 \times 2のマス目で考えてみましょう。(以下マス目を点とみなします)

平面をA_0,A_1とし、平面の各点はa_k,  0 \leq k \leq 3\で表します。

非交和の元となる順序対をA^*と書き、「Aのコピー」と呼びます。A_0の点のものは(a_k,0)(第二要素の0A_0から持ってきた点の意味)、A_1については(a_k,1)と書けます。A^*_0=\{(a_0,0),(a_1,0),(a_2,0),(a_3,0)\}A^*_0=\{(a_0,1),(a_1,1),(a_2,1),(a_3,1)\}です。

このときA_0,A_1の非交和A_0 \sqcup A_1A_0 \sqcup A_1 = \{(a_0,0),(a_1,0),(a_2,0),(a_3,0),(a_0,1),(a_1,1),(a_2,1),(a_3,1)\}となります(定義ではこれをR_2としています)。

普通は平面A_0上の図形はA_0=\{a_0,a_1,a_2,a_3\}の部分集合と考えるところですが、コピーA^*_0=\{(a_0,0),(a_1,0),(a_2,0),(a_3,0)\}の部分集合であるとすれば、自然に図形はA_0 \sqcup A_1の部分集合となります。

 

R_2の、2個の平面を入れ替える写像(2個ある)と、各平面の等長変換すべてから生成される群をE_2とおきます(2個のEの輪積と呼ばれるものになります)。

「等長変換すべて」を\pi/2単位回転の4つに絞って考えておきます。つまりE=\{0,\pi/2,\pi,3\pi/2\}となります。ここではE=\{e_0,e_1,e_2,e_3\}と書いておきます。入れ替える写像とは、(0,1)\to(0,1)(0,1)\to(1,0)の2つと考えればよいでしょう。二つの写像F=(f_0,f_1)と書きましょう。

FEの直積集合F\times EF\times E=\{(f_0,e_0),(f_0,e_1),(f_0,e_2),(f_0,e_3),(f_1,e_0),(f_1,e_1),(f_1,e_2),(f_1,e_3)\}となります。

 

 

(手記はここで途切れている)